関ジャニ∞はいつからハモりだしたのか

 この記事は「第1回関ジャニ∞プレゼン学会―八月のすべてくれないか―」に参加させていただいたものにすこし加筆修正したものです。

 

関ジャニ∞の魅力のひとつに平均的な歌唱力の高さがあげられる。2014年の紅白歌合戦では生歌で「オモイダマ」を披露したが、堂々たる歌唱が褒められているのをいくつも見かけた。そうなんです、うちの子たちってみんな歌がうまくて、何重に重なるハモりも難しいコーラスラインもお手の物なんです!!

ってあれ、関ジャニ∞っていつからハモりだしたんだっけ?

昔はこんなに歌が上手くて音楽に力をいれたグループではなかったはず。デビュー曲「浪速いろは節」も、一部のメンバーは手拍子のみのレコーディングだったと冗談で語っていたことがある。いつの間にか、当たり前のように「ハモる」ようになった彼ら。ハモり始めは、彼ら(もしくは周りの大人)が音楽に熱をいれたタイミングとも重なるのでは?

今回は関ジャニ∞の「ハモり」について少し調べてみたいと思う。

 

関ジャニ∞のハモり曲

まずは関ジャニ∞の曲に対して、どれくらいハモりがはいっているかどうかを確認した。

  •  対象曲は浪速いろは節〜応答セヨの関ジャニ∞が全員で歌っている曲すべて
  • ただしRemixやバージョン違いは除く
  • 「同じ歌詞を違う音程で歌うこと」をハモリとする(フェイクが重なっただけのものはハモりではない)
  • 本人ではないハモりはカウントしない
  • わからなかったものはカウントしない

素人耳なので多少のずれ漏れもあると思うが多めにみてほしい。また、アルバムにもはいっているシングル曲は集計の都合上、二重にカウントされている。

 

 

気になる結果はこちら。

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80%以上の曲にハモりがはいっている!関ジャニ∞ほとんどの曲でハモってんな〜と思っていた感覚はあながち間違いではなかったんだなぁと感心した。ちなみに集計には含まれていないが最新シングルの「ここに」とカップリング「タカラモノ」「All you need is laugh」もばっちりハモりがはいっている。

 

アルバム別にも見てみたい。アルバムに収録されている曲の中でハモりがはいっている曲の割合を調べた。

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FIGHT、JUKE BOXは全曲ハモりが入っている。 関ジャニズム、ジャムも90%を超えるくらい高い。気になるのはPUZZLEからの上昇具合であろう。ズッコケ大脱走ではハモる曲は半数にも満たなかったが、PUZZLEは8割の曲がハモっている。

 

年代別はこちら。こちらにはシングル曲やカップリング曲も含まれている。

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2008年からぐっとあがったハモり曲率は2009年には全体の80%を超え、以降は85%を切ることはない。PUZZLEが発売されたのは2009年4月。2008から2009年のあいだが大きな転換期なのは間違い無いだろう。

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なんとなく納得の並び。(黄色はハモりあり)

単純にハモる曲が増えただけでなく、「このコーラスは本人の声だな」とはっきりわかるようになったのもこの頃。それまではコーラスに加工がかけられて(ふぁさーっとした感じの加工)、「この薄くはいっている高音はヤスくん?」と疑わしい曲も多かったが、 2008年あたりからはっきりと声に主張が出るような録音になっている。同時に本人以外のコーラスは減っている。例えば、2007年発売のイッツマイソウルのサビで鳴っている高音のハモりはおそらく本人たちではないと思う。もしかしたら本人かもしれないが、音量はかなり小さく、注意して聞かないと聞き逃してしまう。楽器と同位置にコーラスがはいっている感じ。一方で、2008年発売の無責任ヒーローは、すぐに「安田くんの声だ!」とわかる上ハモりがはいっている。コーラスの声もきっちりと楽しめるのだ。以降の曲は、ハモりのラインを思い出すことが易しい曲が多くて、それはコーラスが前に出てきているという証でもある。

歌唱力に不安があると加工がかけられることがあると思う。ケロケロボイスは音程の不安定さをごまかすのに向いている。*1歌手を目指す私の友人は「うまく録音したつもりでも、実力が足りないから加工をかけられてしまう」と嘆いていた。関ジャニ∞の歌唱力は2008年にかなり向上したのでは?

 

2008年〜2009年になにがあったのか

実は2008年はリリースが少ない年だった。アルバムもライブDVDも1枚も出ていない。では何をしていたのか?そう、ライブである!(ばばーん!)2007年5月から9月末まで、全都道府県を回るツアー(通称47)を成功させた関ジャニ∞は、勢いそのままライブをしまくっている。47が終わった半年後の2008年ゴールデンウィークには「∞だよ!全員集合」というアリーナツアーを、7月からは地方を中心にまわる「∞だよ!全員集合 夏だツアーだワッハッハー」をとりおこなった。ちなみに不思議とどちらもDVDにはなっていない。

また、合間にはソロコンサートがひっきりなしに行われている時期でもあった。横山くんは2回目のソロコンを2008年の春に実施。安田くんもソロ舞台をおこなった。大倉くんも1月にEndless Shockを経験。村上くんのソロ舞台If orの前身である未定「壱」が始まったのも2008年だった。(未定「壱」はライブではないけれど)昔からライブやソロコンサートは多いグループであったが、この頃はとにかくひっきりなしに「次の現場のお知らせ」が流れてきた記憶がある。そして、渋谷くんがFLAT FIVE FLOWERSの活動を始めたのも2008年だった。FLAT FIVE FLOWERS、通称フラフラをメンバーがどう思っていたかはいろいろと語られてはいるが、良くも悪くも刺激になっていたのではないかと思う。渋谷すばるというボーカリストを客観的に捉えるきっかけにもなっただろうし、その後ろで、横で歌うことを改めて考えることにもつながったはず。2008年、音楽がグループの核になってきた時期といえるだろう。

2007年、2008年とたくさんのステージを経験し、着実に力をつけてきた7人が、実力をぐんとあげた2009年。当たり前のように曲にハモりがはいり、コーラスワークで聴かせられるようになったルーツはやはりライブにあった、というのはドラマチックすぎるだろうか。

 

ハモりの話をもう少し

ちなみに関ジャニ∞が初めてハモった曲(リリース順)は「All of me for you」だった。メロのフレーズに重ねたコーラスが耳に残る。今より甘い声の安田くんの上ハモがキュンとする。反対に一番最近の曲でハモっていないのは「えげつない」である。ラップ対決の性質か、サビも全員ユニゾンでお送りされている。「スペアキー」もハモりがはいっていなかったのは意外だった。バラードだからって必ずしもコーラスを厚くするわけではないらしい。スペアキーの作曲家はマシコタツロウさんで、「さよならはいつも」や「My Last Train」、「cinematic」をつくられた方だが、どれもハモりははいっている。編曲者はおなじみ大西省吾さんで、関ジャニ∞の曲もたくさん手がけられていることからも、作曲家や編曲者の癖でハモりが入っていないわけでは無いようだ。サビなんて今にも下ハモが聞こえてきそうなのに、ユニゾンなのはどういう意図があるんだろうな。

また、リアレンジして再収録されている「BJ」「Heavenly Pshycho」もそれぞれ聴き比べてみた。どちらもコーラスにはほぼ変化がなかった。アレンジによって雰囲気は変わっているし、歌うパートも異なっているのだが、耳に馴染んだフレーズはそのまま残しているらしい。たしかにHeavenly Pshychoの最後、「希望の歌」にラインの異なるコーラスがはいっていたら、かなり違和感を覚える。

 

 

最後に

ほんとは個人に焦点をあてた分析や、安田くんのつくった曲の分析をしたかったのだが、 時間がなくてできなかったのが心残りである。

安田くんは基本的に上ハモを担当することが多い。ピッチの正確さやリードボーカルへの寄り添い方など、隅々にひかる職人技がとても好きだ。私は安田くんのコーラスが好きすぎて「上ハモ最高」といううちわを作って持ったこともある。「コーヒーブレイク」は思いがけないおもしろソングだが、安田くんの高音を堪能するにはこれ以上のものはないとも思う。高すぎてもはや笑ってしまう。理解の範疇を超えたものに出会うときに起こる感情は笑いなんだな、としみじみする。

「ドヤ顔人生」はそんな安田くんの貴重な下ハモが味わえる。わかりにくいけれど、2メロ大倉くんの下ハモをしているのは実は安田くんだ。(コンサートで見て驚いた!)一番声の低い大倉くんの下ハモにあえて安田くんをあててきたセンスに乾杯。まろやかだが核のある低音を出すのだなぁと惚れ惚れしてしまう。そういえば各メンバーの声の高さ(上限)はなんとなくイメージできるが、声の低さ(下限)は知らないかも?どこかで調査した人がいたら教えて欲しい。

 

関ジャニ∞とハモりについての研究は以上とする。8月を関ジャニ∞にあげるきっかけをつくってくれた塩津さんと美雪さんには感謝しかない。次、機会があれば、ぜひ安田章大コーラス大賞を開催できたらな、と思う。

 

*1:もちろんきちんと意図がある場合が多いとは思う